JRのネット予約を考える①
こんにちは。すでに三日坊主になりつつあるブレザーです。
今日はこんな話を。
大きく変化した(らしい)えきねっと
2021年6月、サービス開始から20年経ったえきねっとが大幅リニューアルしました。これまで、散々使いにくいと文句を言われ続けてついに発表された全面リニューアル。誰もがやっとか!と驚いたわけです。
しかし、蓋を開けてみればまあ酷い。「鉄道会社がこんなサイト作るのか!」と驚かれた方も多いのではないでしょうか。
まあ有効0日の乗車券は先にも後にもないでしょうから記念発券のマニアで増収にはなったんじゃないですかね
オタクがデバッグ
私もプログラミングとかそっちには明るくないので詳しい話は避けますが、こういうサイトって通常「デバッグ」と言ってリリース前にバグがないか想定される様々なパターンを試し、バグや欠陥が見つかったら修正するという作業をするんだそうです。考えてみれば当たり前の話ですが。
で、今回のリリースはかなり注目されていましたから、オタクが皆おもちゃのようにいじり尽くしたところ、連続乗車券を発券すると有効期限がめちゃくちゃになるバグが発覚しました。JR東日本はその指摘で2日後には修正しましたが、結果的にオタクがデバッガーになるという事態になったわけです。
バグに関しては何に関しても起こり得る話なので、そんなに追求すべき話でもないですし、連続乗車券なんてその筋の人しか使わないのでテストが足りなかったんだなあでいいんですが、酷いのはここからです。
具体的に見ていこう
鉄オタないしお出かけヤクザじゃない普通の人が使いそうな2つの事例を検証してみましょう。
①新幹線で東京から新青森に行きたい
まずはこれまで通り乗車駅と降車駅を入力していきます。今回は東京と新青森です。
東京を入力すると絶対使わないような候補がずらりと出てきます。大久保やら新木場やらから乗りたい人が「東京」って入力することなんてあるんですかね。勝手に選択されない分、これまでのえきねっとのおかげで知名度向上した阿波大宮よりはマシでしょうか。
ちなみに余談ですが三重県の津駅から特急南紀を予約したい人がえきねっとを使うとこうなります。左が「津」、右が「つ」で検索した結果です。
ちなみに比較されがちなJR西日本の予約サービスe5489ではこんな感じ。ひらがなで入力すると完全一致で一番上に出てきます。使いやすい。
さて、話を戻しましょう。東京から新青森まで行きたい旅行者だと思ってみてくださいね。
駅名を入力、日付、時間を選択すると列車選択の画面が出てきます。
まず、一番に出てくる空席情報はデフォルトで表示されますが、二番目に出てくる候補は表示するを押下しないと空席情報は出てきません。
というか候補が2つしか出てこないって少なすぎませんか。旧えきねっとではもっと出てたはずです。日本の鉄道は世界一正確だと言われるように高頻度で運転されていますから、もう少し候補を増やしてもいいのではないでしょうか。
そしてここで¥17870という参考価格が出てきます。これがあくまで「参考価格」なのがポイント。しかしトクだ値の表示がありますね。なん%、なん%、なん%と。どれが参考価格なのかわからないわけです。ここで選択者には混乱が生まれます。
別の例を考えてみましょう。皆様がものを選ぶときに値段で決めることはないでしょうか。仮に50%のトクだ値が残っている列車を取りたいとしましょう。はやぶさ31号は50%の表示がありますね。「お、まだ残っているのか、じゃあこの列車にしよう」と画面を進めます。
「売り切れのものを表示するな!!!!!!」
となりませんかね。わざわざこの画面までいかないと残席があるかわからないのです。列車選択時に表示されるのは設定があるかどうか。残席があるとは限りません。
もうすでにストレスフリーではないんですが. . .
と、ここで上を見るとeチケットと紙のきっぷを選べることに気づきます。紙のきっぷだといくらになるんだろう。選択してみます。
¥7530。eチケットだと50%OFFでも¥8730だったので、紙の方が安いですね。
では紙のきっぷを選んでいきましょう。
残念!紙のきっぷには乗車券がついてないのでこの時点で一気に1万円以上加算されます!
.....
オタクは別にこれでいいんです。でも普通の人で乗車券と特急券の区別がついてない人もそれなりにおられると思うんですよ。
そうなると「なんでいきなり高くなるの?んー意味わかんない!もう窓口行ってお姉さんから買います!」って人も出てくるんじゃないでしょうか。
疲れました。
②仕事帰りに新宿から小田原まで特急湘南で帰りたい
今年の3月のダイヤ改正から、平日に運行されていた東海道線のホームライナー、湘南ライナーが 特急湘南に変わりました。ホームライナー小田原が運行されていた新宿からも1日2本ですが特急湘南が運行されています。
さて、では特急湘南の指定席券を購入しましょう。
まずは新宿を入力します。湘南21号が新宿19時30分発ですので時間は19:30を設定します。「新宿」を入力すると小田急新宿も表示されますが、JRなので上を選択します。
さて、これで検索するとどうでしょう。
ええええええええええええーーーーーーーーー!!!!!!!!!!
開いた口が塞がりません。
特急湘南に乗るからえきねっとで検索したわけです。
山手線とアクティで帰るならえきねっとなんて開きませんし、ロマンスカーで帰るなら最初から小田急の予約サイトを使いますよ。
というか新宿駅を選択した時点で「新宿」と「新宿(小田急)」を分けたのはなんだったんですか!!!!
「もういいや」となるに違いありません。ちなみに経由駅に藤沢を入れたら特急湘南が候補に挙がりました。なんじゃこれ。
某○ちゃんねるを見てみると、「改悪」「クズねっと」「旧サイトに戻してくれ」「ストレスフル」「贔屓目に見ても大失敗」言われ放題です。
もちろんリリース直後なので顧客の反応を見てという部分もあるでしょう。オタクと一般客では反応も違うでしょう。会員の大多数を占めるであろう一般客には使いやすいならこれでもいいんです。ただ使いにくすぎませんか。なんで旧えきねっとで良かったところまでこんな仕様にしたのでしょう。MaaSを意識しすぎたのでしょうか。今後の改善が期待されます。
そもそも
根本的なところに戻ると、えきねっと使う人って何を目的にアクセスするでしょうか。例えば航空会社の予約サイトにアクセスする人は、飛行機を予約しようとしてアクセスするんです。Appleの予約サイトにアクセスする人は、Appleの製品を購入しようとしているor興味があるからアクセスするんです。じゃあえきねっとはどうでしょうか。多くの人がJRの特急券を購入したいからアクセスするんです。どういう経路で行こうか考えている人がえきねっとにアクセスしますか?ほとんどの人はYahoo乗り換え案内やジョルダンなどの専門サイトにアクセスすると思います。
にも関わらず、検索〜経路案内〜予約〜決済を一括で行うことで移動の利便性を向上させようという「MaaS」を無理やり取り入れようとするから、このように訳のわからないことになっているんでしょう。今後旅行商品をえきねっとから予約できるようなシステムにすると発表されています。びゅうプラザのオンライン化です。
えきねっとに導入されている経路検索がYahoo乗換案内レベルに便利なものなら使いようがあるんです。しかし中途半端な状態でリリースしてしまうから誰からしても使いにくいという現象が起きてしまうと思うのです。
先日東武鉄道が、フリーきっぷ+スカイツリーのデジタルきっぷを発売しました。*1
東武鉄道は、日光地域でバス、鉄道、旅館の予約を一括で行うMaaSアプリの開発を発表しています。これも鉄道と観光施設の予約・決済をまとめて行うその取り組みの一つなのだろうと思います。
本来MaaSは利便性が向上するものなのに、えきねっとの今の状態では逆効果です。
違うそうじゃない
前述した通り、えきねっとにアクセスする多くの利用者はJRの特急券を予約しようとしてアクセスします。そんな一般の利用者が求めているのは航空会社のような予約なんです。
下の画像は日本航空の予約サイト、羽田から伊丹で検索したものです。もしもここにLCCのダイヤが出てきたり、新幹線のダイヤが出てきたら「ちゃうねん、なんでやねん」となるでしょう。
えきねっとと違って料金が一目でわかります。確かに旧えきねっとでは料金が最終画面まで出てきませんでしたから改善はしました。しかし出せばいいというもんではないんです。
長くなったのでこの辺で終わり。えきねっとに関してはこれまで頻繁に使っていた人からすると改悪になった点も多いと思います。ポイントの還元も一律から%に変わったため、還元率が悪くなることが多いと思います。こうした経営判断の改悪に文句をつけるつもりはありませんが、サイトの利便性は大事ですよ。
と、ここまで新しくなったえきねっとをご紹介しましたが、次回はこれが招く負の可能性について考えようと思います。
以上。ありがとうございました。